フライトシミュレーション界で現在最も熱い視線を浴びているプロジェクトの一つ、BlueBird SimulationsのBoeing 757開発が重要な節目を迎えました。

Navigraphの最新ユーザー調査において、名だたる競合を抑え「最も期待されるアドオン」の第2位にランクインした事実は、コミュニティの渇望を如実に物語っています。

開発チームは現在、全3段階のベータテスト工程のうち、最大の難所である「ステージ2」に突入したことを明らかにしました。

本記事では、最新の進捗状況から、議論を呼んでいる価格設定、そしてMSFS 2024への対応における技術的障壁まで、専門的見地からその全貌を解き明かします。

ベータテスト「ステージ2」の詳細とパフォーマンス

現在進行中の「ステージ2」は、全システムの検証を行う極めて重要なフェーズです。

  • テスト範囲: EFB(電子フライトバッグ)を除くすべてのシステムがテスト対象。
  • EFBの進捗: 現在の完成度は約50%です。このEFBの完成と外観の最終仕上げが、続く「ステージ3」の主眼となります。
  • パフォーマンス: 幸いなことに、テスターからのフィードバックは「極めて良好」とのこと。フレームレート等の最適化は現時点で高い水準にあるようです。

今後のタイムラインとして、比較的短期間で終了する見込みの「ステージ3」へ移行した後、数週間以内に正式なリリース日の発表が行われる予定です。

リリース計画とバリエーション、価格設定

項目詳細内容
リリース目標時期2026年 第3四半期(Q3)
ベースパッケージ価格80ドル
初期リリース機体757-200(ロールス・ロイス製およびプラット&ホイットニー製エンジン搭載)
モデルバリエーションウィングレット装着型、および標準ウィングチップ型の両方
無料アップデート予定757-300(リリース後、早期に提供予定)
有料拡張パックフレイト(貨物機)機体。※ベースパッケージが必要だが、価格はベースより大幅に安く設定予定
プラットフォームPC版先行。Xbox版は後日リリース予定

こだわり抜かれた再現度と「早期アクセス」的懸念

コミュニティの一部では、80ドルという価格設定に対し、一部機能が「リリース後のアップデート」とされる点について懸念の声が上がっています。

しかし、開発チームは「システムの深み」こそがその価値を担保すると主張しています。

  • 膨大な機能リスト: 6月に公開予定の初期機能リストは、ATAチャプター(航空機システム区分)を網羅し、5ページ以上に及ぶ膨大なボリュームとなっています。
  • サーキットブレーカー: 200以上のサーキットブレーカーが個別にモデル化されており、これは将来的な複雑な故障シミュレーションの基盤となります。
  • カスタムFMS: 既存のライブラリに頼らず、ゼロから独自にコードされたLNAV/VNAV対応FMSを搭載。
  • 故障システム: リリース初期段階でも一定の故障(Failures)は搭載されますが、より包括的で高度なシステムへの拡張はリリース後のアップデート項目となっています。

MSFS 2024への対応、技術的課題とネイティブ版の真実

新プラットフォーム「MSFS 2024」への対応について、ジャーナリストの視点から特筆すべきは、開発チームが直面している「動く標的」への対応苦慮です。

初期リリース時の互換性

当初のリリースは「MSFS 2020用」として発売されますが、MSFS 2024上でもシステムの互換性が確保されており、飛行自体は可能です。

ただし、ウォークアラウンド・モードや外部パネルのインタラクティブ操作といった2024特有の機能には、初期段階では対応しません。これらは後日、既存購入者へ無料アップデートとして提供されます。

なぜ最初から「ネイティブ」ではないのか?

開発を主導するSherv Ahoo氏によれば、MSFS 2024のエンジンは1つのモデルあたりのポリゴン数に厳格な制限を設けており、機体を数十から百以上のサブモデルに分割(モジュール化)する必要があります。

  • 2020版: 約50個のフォルダ構成
  • 2024版: 100〜150個のフォルダ構成が必要(LOD/サブモデルの複雑化)

さらに、最新のSim Update 5 (SU5) がベータ版の挙動(APU、ブリードエア、外部電源周りのバグ)を壊したという事実もあり、OS側の不安定な仕様変更に振り回されている現状が見て取れます。まずは「安定して飛べる」2020/2024互換版のリリースを優先するのは、賢明な判断と言えるでしょう。

今後の展望

アビオニクスに関しては、将来的なアップデートとしてFPDS(Flat Panel Display System)の再現が計画されています。一方で、LDS(Large Display System)については「開発計画はない」と明言されており、ユーザーは過度な期待を避けるべきでしょう。

現在、公式Discordサーバーが一般公開されており、開発チームと直接コミュニケーションを取ることが可能です。開発チームは「このプロジェクトに心血を注いできた。757はBlueBirdにとっての始まりに過ぎない」と、その並々ならぬ熱意を伝えています。

写真 : BlueBird Simulations