長距離路線の象徴「A340-600」がMSFSに降臨

Aerosoft社とエアバス機の高度なシステム再現で他を圧倒するToLiss。
この異色の、しかし必然とも言える強力な提携によって誕生した「A340-600 Pro」が、ついにMicrosoft Flight Simulator(MSFS/MSFS2024)向けにリリースされました。
実機のA340-600は、2002年に就航したA340シリーズ最大の派生型です。全長75メートルを超えるその姿は、ボーイング747-8が登場するまで世界最長の旅客機として君臨し、その細長いシルエットから「フライング・ペンシル(空飛ぶ鉛筆)」の愛称で親しまれてきました。
4発のRolls-Royce Trent 500エンジンが生み出す圧倒的な長距離航続性能は、まさに大陸間横断の象徴と言えます。MSFS市場では、既にiniBuilds A340という強力な競合製品がリリースされています。
しかし、本作は「Pro」の名称を冠するに相応しく、ToLiss直系のスタディレベル・システムを武器に、最もハードコアなシムパイロットをも唸らせる完成度を見せてくれました。
製品概要と価格情報
システムの全開発をToLissが担当し、ビジュアルおよびモデリング面をAerosoftが主導するという、明確な役割分担のもとで進められました。
- 対応プラットフォーム: MSFS 2020 および MSFS 2024
- 価格: 発売記念価格 €69.99(税抜) / 通常価格 €79.99(税抜)です。
- 開発元: Aerosoft(ビジュアル)、ToLiss(システム・フライトモデル・エンジンモデル)。
ToLissが手掛ける「スタディレベル」のシステムシミュレーション

本作の真価は、MSFS標準の動作挙動から確立させた、ToLissが独自に構築したカスタム・システム群にあることです。
カスタム・フライトモデルと操縦特性(FBW)
Airbus機特有の操縦特性が徹底的に再現されています。
- Flight Control Laws: Normal、Alternate 1/2、Direct Lawを完全に網羅しています。各法則における保護機能(プロテクション)の変化についても、忠実にシミュレートされています。
- 動翼の個別挙動: 2対のエルロンと6枚の独立したスポイラーが個別に動作します。リフト(揚力)とドラッグ(抗力)への影響がリアルタイムで演算され、油圧故障時には動翼が風圧で中立位置に浮き上がる「フリーフローティング」現象まで再現されています。
高精度ADIRUモデル
特に注目したいのは、3系統のADIRU(航空データ・慣性基準ユニット)のモデリングです。気圧計測エラーや姿勢角の測定誤差がシミュレートされており、機長席と副操縦士席でわずかな表示の差異が生じます。この誤差はFBWやオートパイロットにも伝わるため、常に計器を監視するプロフェッショナルな視点が求められます。
ロールスロイス Trent 500の完全再現
エンジンモデルは完全にカスタム化されています。
- パラメータ推移: Trent 500特有のN1、N2に加え、 N3 まで正確に算出されます。燃料フロー、EGT(排気温度)、推力の相関関係が極めて高い精度で保たれています。
- ブリードエアの影響: エアコンパック、エンジンスターター、防氷装置(アンチアイス)によるブリードエア消費が、EGTの上昇や最大推力の低下にダイナミックにフィードバックされます。
故障シミュレーションとFMGS
- 303種類の故障: ランダム、あるいは特定の飛行フェーズや高度・速度をトリガーとして発生させることができます。
- リセットスイッチ: コクピット内のオーバーヘッドパネルにある各種リセットスイッチが機能し、実機と同様の復旧プロシージャを体験できます。
- FMGS: 3つの独立したMCDU、2系統の独立したオートパイロットを搭載しています。Hoppie CPDLCによるPDC/WXデータのダウンロードもサポートされています。
EFB(電子フライトバッグ)と機能紹介

スタディレベルの厳格さと、シミュレーターとしての利便性を両立させるため、高機能なEFBが統合されています。
- 「Active Freeze」機能: 機体の動きを凍結させたまま、MCDUの入力操作のみを進めることが可能です。
- 重量とバランス(CG)管理: 飛行に伴う燃料消費による CG(重心)の予測推移 を可視化します。
- Situation Saving: 10種類のプリセットされた「シチュエーション」を収録しています。イージープライから複雑な故障対応まで即座に開始できます。
- タイムスキップ: 巡航フェーズにおいて、次のウェイポイントまで時間をスキップすることが可能です。
- 外部連携: Navigraphチャート、SimBrief OFP(飛行計画書)の表示、ACARS経由のデータ uplinkに対応しています。
収録塗装一覧

世界中の主要なオペレーターを網羅しており、現役のLufthansaの新旧塗装やアゼルバイジャン政府塗装、コンビアサ、マハーン航空が含まれている点はファンにとって嬉しいです。
- Lufthansa (New & Old Livery)
- Virgin Atlantic (Classic Livery)
- Cathay Pacific
- Iberia (Old Livery)
- Etihad Airways
- South African Airways
- Thai Airways
- Azerbaijan Government
- Aerosoft House (Fictional)
- その他、ConviasaやMahan Air等、全19種類を収録しています。
システム要件と導入方法
本アドオンは計算負荷が高いため、最新のミドル~ハイエンド環境が推奨されています。
- 推奨動作環境
- OS: Windows 10 / 11
- CPU: Intel i7-10700K | Ryzen 7 5700 以上
- RAM: 32GB
- GPU: NVIDIA RTX 2080 | Radeon RX 5700 以上(VRAM 8GB)
- ストレージ: 18GB以上の空き容量
- 導入: 専用ソフト「Aerosoft One」経由でのインストール(インターネット接続必須)。
A340-600 Proは「買い」か?

客観的に見て、Aerosoft A340-600 Proは、現在MSFSで利用可能なAirbus機の中でもトップクラスのシステム深度を誇っています。
ToLissが長年培ってきた技術が惜しみなく投入されており、特にADIRUやエンジンモデルの挙動は、単なる「アドオン」を超えた「トレーニングツール」に近いものがあります。
一方で、テクスチャの解像度や3Dモデルの細かなバグなど、ビジュアル面の仕上げには改善の余地が残ります。しかし、これらは今後のアップデートで修正可能な範囲であり、何よりも「中身」の完成度が圧倒的です。
iniBuilds版との比較においても、システム重視のパイロットであれば、本作の「Pro」仕様に投資する価値は十分にあると言えるでしょう。
深淵なシステムを解き明かし、長距離フライトの真髄を味わいたいシムパイロットの皆さんにとって、本作は必携の機体になるでしょう。製品は現在、Aerosoft公式ストアにて購入可能です。
(全画像:Aerosoftより)
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