MSFS 2024向けの大型フラッグシップ機として長年期待されてきたiniBuildsの「Airbus A380エアライナー」について、2026年8月21日、これまでで最も詳細な開発アップデートが公開されました。

システム・故障シミュレーション・エンジンバリエーション・降着装置・客室デザインまで、超大型機ならではの作り込みの深さが明らかになっています。

同日にはAirbus A350シリーズの開発方針アップデートも合わせて発表されており、iniBuildsのワイドボディ機ラインナップ全体が動き出していることが伺えます。

発表の概要

今回のアップデートは、iniBuildsが定期的に実施しているシーナリー/機体開発報告の一環として公開されたもので、A380に関しては特にシステム面・機能面にフォーカスした内容となっています。

同時にAirbus A350の開発方針についても言及があり、iniBuildsの大型ワイドボディ機戦略が全体像として見えてくる内容になりました。

「アクラフト・パーシステンス」— セッションをまたぐ機体状態の保持

今回のアップデートで最大級のトピックとして挙げられているのが「アクラフト・パーシステンス(機体状態の保持)」機能です。

燃料搭載量、スイッチ位置、各システムの状態がシミュレーターのセッションをまたいで保持される仕組みで、リアルな運航オペレーションの再現度を大きく高めます。

特にユニークなのが上水・汚水システムのシミュレーションです。給水・汚水タンクの消費量や蓄積量、地上でのサービシング(補給作業)までモデル化されており、複数セクターにわたってサービシングを怠ると、化粧室やファーストクラスのシャワーが使用不能になるという、実運航さながらの仕様になっています。

故障(フェイラー)システム — ATAチャプター準拠

故障シミュレーションはATAチャプター(航空機システムの国際標準分類)に沿って整理されており、手動でのトリガーとランダム発生の両方に対応します。

例として、エンジンの燃料漏れ、客室与圧の段階的なリーク、個別ディスプレイユニットの故障などが挙げられています。

エンジンバリエーション — Trent 900とGP7200、2つの時代を再現

A380にはロールス・ロイス製「Trent 900」とエンジン・アライアンス製「GP7200」の2つのエンジンファミリーが搭載可能で、それぞれ独自のアーキテクチャに基づいて開発されています。

外観モデル・サウンド・始動/停止時の挙動・スプール特性・スラスト応答・コックピット表示までエンジンごとに作り分けられる予定です。

さらに興味深いのが、2010年就役の「Batch 2」仕様と、2026年の現代仕様を反映した最新の「Batch 7」仕様という、異なる年式の機体バッチを選択できる点です。同じA380でも就役時期によって異なる近代化改修の様子まで再現される見込みです。

フライトモデル — CFDと新フューゼラージ・オブジェクトシステム

超大型機ならではの巨大な質量・慣性、特徴的な胴体形状の再現は大きな技術的課題です。iniBuildsはMSFS 2024の最新フライトモデル技術を活用し、主翼まわりにCFD(数値流体力学)計算を適用。

さらにMSFS 2024の新しい「フューゼラージ・オブジェクトシステム」を用いることで、シミュレーター側が機体の実際の物理的形状を認識し、より正確な飛行特性を導き出す仕組みを採用しています。

降着装置 — 独立稼働するボギーとボディギア・ステアリング

A380特有の複雑な降着装置システムも忠実に再現されます。後方のボディギア(胴体下の追加車輪ユニット)がパイロットの操作に応じて自らステアリングし、地上での旋回半径を改善する「ボディギア・ステアリング」機能を装備。

さらにMSFS 2024の新しいサスペンションモデリングと連携し、各降着装置ユニットが不整地走行時や地上走行時に独立して反応します。

個々の脚部に追加の接地点(コンタクトポイント)を設定することで、A380特有の複数ボギーが地面とどのように相互作用するかまで細かく表現されるとのことです。

サウンドデザイン

サウンド面ではスーパージャンボならではのスケール感・存在感の再現に注力。

ダイナミックな環境音、コックピット内の操作音、客室全体にわたるポジショナルオーディオ、さらに機内ラウンジなど特定エリア専用のアンビエンス音まで作り込まれています。

コックピット&キャビン — エミレーツ風4クラス構成、シャワースパも再現

コックピット・客室ともにアンビエントオクルージョン技術の向上、高度なマテリアル表現、パフォーマンスを意識した最適化手法が採用されています。

客室はエミレーツ航空をイメージした4クラス構成でモデル化されており、前方のシャワースパ、機内ラウンジ&バー、スターシーリング(天井の星空演出)効果、複数パターンの客室照明設定まで再現される予定です。

EFB・OIS・GSX統合の強化

電子フライトバッグ(EFB)オンボード・インフォメーション・システム(OIS)についても開発が進められており、フライトプランニングや地上運用との連携が強化されます。

FSTLのGSX Proメニューを完全統合するなど、新しいツール群を前提とした設計が進められている点も明らかにされました。

VSD(垂直状況表示)と気象レーダー

垂直状況表示(VSD)は継続的にリファインが進められているほか、気象レーダーは新しいシミュレーターAPIを活用し、チルト角・アジマス(方位角)の調整が可能になる見込みです。

同時発表:A350シリーズも「2トラック」体制へ

同日、iniBuildsはAirbus A350シリーズの開発方針についても発表しました。開発は以下の2トラックに分かれて進められます。

  • A350 Systems and Performance Update 1(v1.2.7): 現行のA350 v1向けの近日アップデート。コミュニティからのフィードバックや社内テストで指摘された不具合の修正が中心
  • A350エアライナー v2: MSFS 2024専用の大規模リビルド版。A380で培われる新技術も一部取り込まれる見込み

リリース時期について

現時点でA380の具体的なリリース日・価格は発表されていません。

なお、iniBuildsはこれまでの発表で、同機を過去の自社機体とは異なり「発売初日から全機能を搭載したフィーチャーコンプリート」な状態でリリースする方針を示しており、発売後は不具合修正や品質改善が中心になるとしています。

あわせて、A380やボーイング777のような大型機が2〜3本のボーディングブリッジに同時接続できる「マルチジェットウェイ」技術についても、香港(VHHH)など既存の対応空港への年内バックポートが予定されています。